住民税滞納を分割納付する方法とは?
私たちは大人であれば誰でも納税の義務というものを課されており、所得税や住民税、固定資産税など該当する様々な税金を正しく納付しなければなりません。この中でも特に厄介な税金として知られているのが、前年度の収入に応じて課税されることになる住民税です。
もしこのように住民税の支払いが難しくなってしまった場合、支払いをそのまま放置していると滞納扱いになってしまい、様々な悪影響が生じてしまいます。このような事態を避けるためにも、滞納してしまった場合にどうすれば良いのかを知っておくことが大切です。
具体的には住民税の分割納付という方法が挙げられるので、参考にしてみてください。
上京でお金がかかり...はじめての住民税滞納【体験談】
私は10年ほど前まで、地方にある実家でずっと暮らしていました。それまでは銀行が母体となって運営しているクレジットカード会社の従業員として正社員で働いており、残業もほとんど無いうえにボーナスもしっかり支給されていたので、かなり恵まれた就業環境だったと言えます。ただ、働く環境は確かに良かったのですが、その中で人間関係だけがうまくいっていませんでした。
職場で幅を利かせているお局様的な人とうまくやって行けず、母体である銀行から天下りしてやってくる上司にも色々と不満を感じていました。いつの間にかそういった不満が溜まりに溜まり、この会社を辞めて都会で仕事をしようと考えるようになったのです。もともとは東京で仕事をしていたのですが、実家の都合で地方へ戻って働いていたのです。こういった背景があったので都会への憧れや未練はかなりありましたし、できれば東京に戻って仕事を探したいと本気で考えるようになっていました。
そんな時、渡りに船とばかりに東京にいた友人から上京して仕事を探せば良いのに、と誘われたのです。しばらくはその友人の家でお世話になっていたのですが、やっと仕事を見つけて忙しくなり始めた頃に実家のある自治体から住民税納付書が郵送されてきたのです。
記載されていた住民税の金額は5万円ほどだったのですが、上京したてで貯金も減ってしまっており、支払わなければと思いつつもいつの間にか忘れて放置してしまったのです。きっかけはこんな些細なことでしたが、ここから住民税の滞納が始まってしまったのです。
失業で...結局また住民税を滞納してしまう
前職の経験や知識を活かして金融系の会社に就職していたのですが、時給は1,900円と地方では考えられないほど高かったですし、交通費まで支給してもらえたので非正規社員としては十分すぎるほど高収入を得ていたことになります。
クレジットカードなど専門性の高い業務を毎日こなしていたので、新しい職場で正社員が詳しくない業務などを率先して行うことが出来ましたし、クレーム対応や督促などデリケートな業務も問題なくスムーズにこなすことができていました。非正規社員だったので半年ごとに契約更新がありましたが、いつのまにか過ぎていた契約期間を後から慌てて更新するというほど会社に重宝してもらい、非常に充実した会社生活を送ることが出来ていました。
順風満帆だったのですが、とある年に突然直属の上司から話があると言われ、人目に付かない応接室に呼び出されました。その時点で嫌な予感はしていたのですが、実際に話を聞いてみると案の定、その年以降の新たな契約更新は行わないという通達を下されたのです。不景気で会社を縮小しなければならなくなり、コスト削減のひとつとして非正規社員からリストラが始まったのです。結局その面談から時を置かずして退職という形になり、あっという間に収入が途絶えてしまうことになったのです。
収入が無くなれば生活費に困ってしまうので、とても住民税の支払いまで回せる余裕はありません。こうして私は、また住民税を滞納してしまうようになったのでした。
就職難民の末届いた住民税の納付書
時給が良くやりがいも感じていた職場をリストラによって退職した後は、すぐに新しい仕事探しを始めました。しかし年齢も年齢でしたし、不景気なのはどこも同じなのでなかなか満足できる就職先を見つけることはできませんでした。一度時給1,900円というハイレベルな収入を得てしまうと、それより遥かに低い時給の求人には応募する気すら起こらなくなってしまったのです。
もちろんこれは良い傾向ではありませんが、当時の私は変なプライドや自信を持ってしまっていたので、これまでの仕事の経験を活かせる金融関係で、かつ時給も同レベルの会社という条件でばかり求人を探していたのです。
もちろんそんな高待遇の求人は滅多にありませんし、あったとしても競争率が非常に高いのでそう簡単に採用してもらえません。
東京という土地柄、私よりもずっとキャリアが長かったり資格を持っている人なども数多く応募するので、希望する条件の求人には見事に落ち続けてしまいました。
そのあたりでやっと現実を見つめ、嫌々ながら金融以外の求人にも目を向けてみたのですが、どこの業界も同じような状況なので結果は言うまでもなく惨敗です。何ヶ月も満足できる仕事が決まらず、その間も貯金は減り続けてどんどん生活も厳しくなっていきました。そんな状況であるにも関わらず、前年度の住民税納付書が容赦なく郵送されてきたのです。
当時住んでいた地域は福祉に非常に力を入れていたため、私たちが支払う住民税もかなり高額でした。このため期限内に住民税を支払うことなどとてもできず、届いていた督促状も無視することになってしまったのです。
支払いを滞納する人はこんな人
どちらも詳しい業務内容などは異なりますが、金融という部分では共通するポイントも多かったので、働いているうちに必要な支払などを滞納してしまう人は大きく2種類のタイプに分けることができると気付きました。
- 1つ目は、返済が遅れてしまったことに罪悪感を感じ、何とか返済しようと必死に頑張るタイプです。もちろんこのタイプが滞納してしまっている人の本来あるべき姿であり、自分の義務を果たそうとする責任感の強い人だと言えます。
- 2つ目は、どうしても返済できないことが分かると返済する努力ややる気を失ってしまい、そのまま投げやりな気持ちになってしまうタイプです。今を生活していくことだけで精いっぱいで、とても支払いや返済に充てる経済的な余裕がなく、どうなっても良いやという気持ちが湧いてきてしまうのです。もちろん借りたものは返さなければなりませんし、支払うべき住民税はきちんと納付する義務があるのですが、とてもそこまで気が回らないというのが現実なのです。
私の場合もこの2つ目のタイプに該当しており、日々の忙しさや職探しのストレスから住民税の支払いを無視し、放置してしまっていました。しかし、いつまでも放置し続けても状況が良くなることはあり得ません。心機一転、職探しも納税もきちんとやろうと思い立ち、勇気を出して担当の自治体窓口に住民税の滞納について相談することにしたのです。
誠意をもって対応することが一番!
やっと続けていける仕事に就くことができた後、自治体から郵送されてきていた住民税の納付書や督促状などを持って滞納について相談しに行くことにしました。
まずは滞納することになった理由を説明しなければと思い、リストラされたことやしばらく無職だったこと、雇用保険が切れて貯金も底をつき、親から援助してもらって何とか生活していたことなどを正直に話しました。また、私は昔から持病があり、定期的に診察を受けたり医薬品が必要だったために医療費が他の人よりかかってしまうことなども話しました。
しかし私の場合は新しい仕事が見つかったばかりで十分な経済的余裕がなく、一括して支払うことは難しかったため、正直に話すと自治体の担当者が分割で納付できるように話を進めてくれたのです。毎月いくらなら確実に支払えるかと聞かれたため、5,000円であれば問題ない旨を伝えました。
こんな少額では無理だろうと思っていましたが、意外にも担当者は了承してくれ、毎月5,000円ずつ分割納付していくことになったのです。この金額であれば無理なくきちんと支払うことができますし、滞納しているという後ろめたさからも解放されます。
滞納から差し押さえまでの猶予
いつになったら差し押さえられてしまうのか気になるところですが、住民税を滞納するとまず納付期限から20日以内に督促状が郵送されてきます。
この督促状が発行された日から数えて10日以内に納付が認められなかった場合、法律上は資産の差し押さえができることになります。
最短で、最初の納付期限から1ヶ月程度で差し押さえられてしまう可能性があるということになります。ただ、実際にはこのようにすぐに差し押さえが実行されるようなケースはありません。
督促状が何度も届く他、催告状や差押予告書といった書類が送られてくることもありますし、中には自治体の職員が自宅までやって来ることもあります。督促状の発行や差し押さえのスケジュールについては各自治体で異なり、差し押さえを実行するか否かも自治体の判断に任されているのです。
ただ、多くの自治体では差押予告通知書が送られてくると実際に差し押さえが近いことになるので、注意しておく必要があります。差し押さえられる資産としては、まず給与や預貯金、車や株式に不動産など様々なものが挙げられます。実際に差し押さえが行われる場合は、回収して現金化しやすい預貯金から差し押さえられることが多いです。
分割納付をしたい場合には、納付期限が切れる前に自治体の担当者へ相談するのが理想ですが、最低でも督促状が届いたらすぐに相談することが大切です。少しでも早く相談して、住民税を納付する意志があることを示すことが大切です。
住民税が免除できる人は生活保護受給者のみ?
一口に住民税と言っても、大きく分けて2つの種類があります。
ひとつは、前年の所得に応じて支払う「所得割」と一定額で課税される「均等割」があります。
住民税が非課税になるのは
- 生活保護法による生活扶助を受けている方
- 障害者や未成年者、寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4千円未満の方がこれに該当します)。
- 前年中の合計所得金額が市区町村の条例で定める額以下の方
は「所得割」「均等割」どちらも非課税になります。
「所得割」だけが非課税になる場合もあります。
前年度の合計所得が
- 扶養親族がいない人の場合は35万円(収入から必要経費を差し引いた金額)以下
- 扶養親族がいる人の場合は35万円×(控除対象配偶者+扶養親族数+1)+21万円
以下の方は「所得割」が免除になります。
延滞金の免除はできる?その条件は?
住民税(市民税や町民税)を滞納した場合、延滞金を免除してもらったり、減免してもらったりする事は可能です。
地方税法で「市町村長は、納税者又は特別徴収義務者が第一項の納期限までに税金を納付しなかったこと、又は納入金を納入しなかつたことについてやむを得ない理由があると認める場合には、同項の延滞金額を減免することができる」と規定されています。
ここに書かれているやむを得ない理由とは
- 災害などで被害を受けた
- 本人や家族が病気にかかってしまった
- 事業が廃止または停止になってしまった
- 分割払いの実績を作った
- 会社都合でリストラに遭ってしまった
- 生活保護を受けている
- 延滞金減免申請を行った
等の場合で、以上の理由を見てみても分かるように、よっぽどのことがない限り、住民税の滞納の延滞金は減免や免除の対象にはなりません。
住民税の滞納分の延滞金を減免するためには、延滞金減免申請書を役所から取り寄せ、必要事項を記入して、提出をする必要があります。ただし、申請をしたからといって、必ず延滞金が減免される訳ではありません。
理由によっては、減免や免除が認められないケースもある事を了承しておく必要があります。